分を超えて

動物も植物も細胞の中心に細胞核を持ちその中に染色体がある 父親と母親から23本ずつ受け継いだ46本のヒトの染色体には 1番から22番までの常染色体とXとYの性染色体があって 男は常染色体とXのセットと常染色体とYのセットを 女は常染色体とXのセットを2セットを持っている 染色体には長い二重らせん形のDNAが収納されていて DNAのなかで遺伝情報をもっている領域を遺伝子という 染色体のぜんぶ遺伝子のぜんぶ遺伝情報のぜんぶをゲノムといい ヒトゲノムに含まれる遺伝子の数は約26,800個だという そういう中学理科の世界からはるかに遠いところに 個人の遺伝情報に合わせた医療だとか 生分解性プラスチックだとかがあって 遺伝子の組み換えはとどまるところを知らない 農業と食品工業は遺伝子組み換えで境界をなくし 医学と医薬品産業は一緒になって遺伝子を組み換え エネルギー分野も環境分野も遺伝子を組み換え 遺伝子組み換えの技術は悪いことではなくなる ナチュラルチーズの大量生産も 酵母や麹菌の育種や甘味料の製造も ヒトインスリンやB型肝炎ワクチンのの製造も エタノールの効率いい生産も 生分解性プラスチックの生産も 農作物の改良からナノバイオデバイスまで みんなみんな遺伝子組み換えのおかげだと いいことばかりが宣伝される いいことばかりに目を向いていて なにか基本的なことを忘れてしまい 倫理や人権も大事だけれど まずはビジネスが大事だと うーん もっと基本的なことがあるんじゃないか 人間の存在が 存在そのものが 大切なのではないか 遺伝子を組み換えたりしていいのか そんなことをする人に畏れはないのか 菌の遺伝子を組み換え 植物の遺伝子を組み換え 動物の遺伝子を組み換え ヒトの遺伝子を組み換え なんにも起こらないと思っているのか ウイルスの感染が広がっただけで オタオタしている人間が もっともっと大きなことを 顔色も変えずにやっている 新しい生物を生み出し それをビジネスにして生きていく そんなことが許されると思っている ヒトはなんて楽観的なんだろう